特定技能 「物流倉庫」の 受入要件、 WMSに 何が 求められるのか
告示787号
2026年1月、物流倉庫分野が特定技能・育成就労の対象に加わることが閣議決定されました。2026年度からの3年間で、合計1万8,300人の外国人材を倉庫の現場に受け入れる計画です。
人手不足に悩む倉庫にとっては朗報ですが、受け入れる側の倉庫には条件がついています。国土交通省の告示が求めているのは、入庫・在庫・出庫を管理する「情報システムの利活用」。平たく言えば、WMS(倉庫管理システム)に相当する仕組みが、現場で動いていることです。
制度そのものの解説は、行政書士や人材会社のサイトに多くあります。一方で、「では倉庫のシステムに何が必要なのか」をシステム側から条文を読んで整理した記事は、まだ少ないと感じています。
この記事では、条文を原文で確認したうえで、「1年以内」が何の期限なのか、WMSに何が求められると読めるのか、そして2026年9月時点で決まっていること・いないことを整理します。
国の 設計図:5万5,100人の 不足を、 3本柱で 埋める
政府の資料(物流倉庫分野の分野別運用方針)には、2028年度に物流倉庫分野で5万5,100人程度の人手不足が見込まれる、という試算が掲載されています。それを、次の3つで埋める設計です。
- ●倉庫管理システム等の
活用に よる 生産性向上:2万300人分 - ●女性・高齢者の
起用など 国内人材の 追加確保:1万6,500人分 - ●外国人材の
受け 入れ:1万8,300人
注目したいのは1つ目です。不足の約37%を「システム等の活用による生産性向上」で埋める設計になっている。外国人材の受け入れと、WMSなどの導入は、国の計画のなかで同じ人手不足対策の両輪として置かれています。受入要件にシステムが入ってくるのは、この設計の帰結だと読めます。
受入要件の 条文:告示第787号 第三条七号・八号
外国人材を受け入れる倉庫事業者には、国土交通省の告示で要件が課されています。核心部分を原文のまま引用します。
七 入庫管理、在庫管理及び出庫管理の機能を有する情報システムを利活用していること。
八 生産性及び労働安全衛生の向上に資する機器又は情報システムであって、前号の情報システムと連携することで機能が拡充されるものを継続して利活用するとともに、その利活用の状況について、協議会に加入した日から起算して一年以内に、協議会において定める方法により協議会へ報告することとしていること。
要するに、入庫・在庫・出庫の管理機能を持つ情報システムが動いていない倉庫は、この制度で外国人材を受け入れられない、ということです。紙とExcelと「頭の中」で回っている倉庫は、制度の入口で引っかかる可能性が高い。
「1年以内」は、 何の 期限か
八号には「一年以内」という言葉が出てきます。「受け入れたあと1年以内にシステムを整備すればいい」と読みたくなる箇所ですが、そうは書かれていません。
1年という期限がかかっているのは、「協議会への報告」という手続きだけです。システムの利活用そのものは、七号で「利活用していること」、八号で「継続して利活用する」と、いずれも現在の状態として書かれています。受け入れを申請する時点でシステムは稼働していないといけない、と読むのが自然です。「先に受け入れて、1年以内に整備します」は通らない建付けです。
ただし、申請の直前に入れれば足りるのか、一定期間の運用実績が要るのかは、まだ公表されていません。この点は後述の「決まっていないこと」に含めています。
七号・八号を、 倉庫の システムに 求められる 要件と して 読む
ここからは、私自身が物流倉庫のシステム導入に関わってきた立場から、条文を「倉庫側に何が要るか」という要件として読み直してみます。あくまで条文から読み取れる観点であり、運用要領で確定した基準ではない点は、先にお断りしておきます。
- 1
入庫・在庫・出庫の
3つの 管理機能を 持っている こと 根拠:七号
条文は
「入庫管理、 在庫管理及び出庫管理の 機能を 有する 情報システム」と、 3つを 並べて 書いています。 入荷検品だけ、 在庫表だけ、と いう 部分的な 仕組みでは 「機能を 有する」に 届かない 可能性が あります。 なお、 Excelの 在庫表が 「情報システム」に 当たるか どうかは、 まだ 示されていません。 - 2
他の機器・システムと
連携して、 機能が 広がる こと 根拠:八号前段
ハンディターミナルや
バーコード、 自動倉庫、 配車や 上位の 基幹システムなど、 「前号の 情報システムと 連携する ことで 機能が 拡充される もの」を 継続して 使う ことが 求められています。 単体で 閉じた 仕組みより、 外と つながる 前提で 設計された ものが、 条文の 趣旨に 沿います。 - 3
利活用の
状況を、 あとから 示せる 記録が 残る こと 根拠:八号後段
協議会への
報告が 義務に なっています。 報告の 様式は まだ 決まっていませんが、 「いつ、 誰が、 何を 処理したか」が ログと して 残らない 仕組みでは、 報告 その ものが 成り立ちません。 - 4
受け入れを
申請する 時点で、 現場で 稼働している こと 根拠:七号・八号の書きぶり
「利活用している
こと」 「継続して 利活用する」と、 いずれも 現在の 状態と して 書かれています。 導入契約を 結んだ、 設定中である、ではなく、 日々の 入出庫で 実際に 使われている 状態が 求められていると 読めます。
これらは「どの製品を選ぶか」よりも前の、「自社の倉庫がいまどの状態にあるか」を確かめるための観点です。大がかりなシステムである必要はありません。3つの機能が揃っていて、外とつながり、記録が残り、日々使われている。条文が求めているのは、その状態です。
2026年9月時点で、 決まっている こと・いない こと
まず、決まっていることをタイムラインで整理します。
- 2026年1月23日
- 閣議決定。
物流倉庫分野を 特定技能・育成就労の 対象に 追加 - 2026年6月26日
- 受入要件を
定めた 告示 (第787号・第788号)を 公布。 特定技能側は 即日適用 - 2026年8月28日
- 育成就労制度の
運用要領別冊 (本文・別表・審査基準)を 公表 - 2027年4月1日
- 育成就労制度の
施行 - 未定
- 特定技能1号評価試験の
開始時期 (2026年8月時点で 「調整中」)
次に、まだ決まっていないことです。
- ●特定技能側の
運用要領別冊 (2026年8月時点で 調整中) - ●協議会の
加入要件・必要書類・受付開始時期 (加入は 義務。 決定次第発表と されている) - ●Excelでの
在庫管理が 「情報システム」に 該当するのか - ●システムの
利活用を どう 立証するのか、 協議会への 報告は どんな 様式に なるのか - ●申請の
直前に 導入すれば 足りるのか、 一定期間の 運用実績が 要るのか
制度の枠組みはもう動き始めていますが、実際に外国人材が現場に来るのは早くても2027年ごろと見られます。逆に言えば、いまWMSがない倉庫でも、これから1年くらいのあいだに導入して稼働させておけば、制度が本格的に動き出すタイミングに間に合う可能性がある、ということです。
この記事は、2026年9月時点の公開資料に基づいています。運用要領や協議会の情報は今後更新されるため、正確なところは国土交通省のページで最新情報をご確認ください。
これから 整える 倉庫は、 何から 始めるか
順番としては、まず現状の把握です。入庫・在庫・出庫のうち、どこが紙とExcelと人の記憶で回っているのかを書き出す。次に、3つの管理機能を満たす仕組みを、自社の規模に合った、導入も運用も軽いものから選ぶ。そのうえで、ハンディや上位システムとの連携と、記録が残る運用を整え、申請までに稼働の実績を積む。この順序で考えると、要件に対して何が足りないかが見えやすくなります。
株式会社ForeGrooveでは、AIエージェント内蔵WMS「クラバンAI(Kuraban AI)」を開発・検証しています。まだ開発中の製品で、この制度の要件との関係を語れる段階にはありません。だからこそ、この制度の先で悩むことになる現場のリアルを、先に知りたいと考えています。
「うちはWMSが入っていない」「Excelと紙で回している」「外国人材の受け入れを、正直どう考えればいいか分からない」。そんな倉庫・物流センターの現場の話を、聞かせてもらえませんでしょうか。管理者、現場リーダー、経営層、立場は問いません。30〜60分、オンラインで構いません。会社名・個人名を外部に出すことはありません。